独立行政法人 労働者健康安全機構 秋田労災病院

秋田労災病院通信

秋田労災病院通信 No.139 平成27年8月発行

尿検査のススメ

中央検査部 主任検査技師 村上 春樹
尿から読み取る病気のサイン

人間ドックや健康診断で必ずといってよいほど受けることになる尿検査。血液と比べると採取が容易で、やや軽視されがちです。しかし、実は尿という液体には、病気に関する情報がたくさん詰め込まれているのです。特に、泌尿器系の臓器に関する異常は、まず尿に現れるといっても過言ではありません。腎臓、尿管、膀胱、尿道という、尿が生成され体外へと排泄される過程に異常があれば、尿中にサインが現れます。そのサインを読み取るのが尿検査なのです。

身体の異常が尿に現れる

尿は腎臓で生成されます。その原料となるのは、絶えず全身を巡っている血液。腎臓では、この血液をろ過して、必要なものと不要なものをふるいにかけます。そのため、健康な身体から排泄される尿には、おもに老廃物や余分な水分くらいしか含まれていません。ここに、タンパク質や糖質、それから血球といった有効活用できる成分が含まれていると、身体に何らかの異常が起こっていると判断することができるのです。もちろん、身体にとって不要なものが多量に含まれている場合も、病気が隠れていると推測できます。では、検出された物質によって、どんな病気が疑われるのでしょう?

病気の大本を突き止めていく

まず、尿中にタンパク質が検出された場合、基本的には腎臓に異常があると考えます。腎臓の中でも、血液をろ過する部分である糸球体に炎症が起こると糸球体腎炎を発症しますが、おもな原因は細菌感染です。

糖質が検出された場合は、その背景に糖尿病が潜んでいると推測できます。糖尿病を発症すると、血液中の糖がなかなか代謝されないため、腎臓での処理能力を超えてしまうことになり、その結果、ろ過し切れなった糖質が尿とともに排泄される訳です。

また、ウロビリノーゲンやビリルビンの結果から肝臓の異常を示唆でき、胃腸の消化吸収のトラブルで尿ケトン体が陽性となります。

このように、おしっこをチェックするだけでも体がきちんと機能しているか、つまり健康が保たれているかどうかがわかりますので、尿検査を受けることをお勧めします!