独立行政法人 労働者健康安全機構 秋田労災病院

秋田労災病院通信

秋田労災病院通信 No.158 平成29年3月発行

睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)と運転免許証

内科副部長  熊谷 真史

日本でも睡眠呼吸障害が医学的にも社会的にも問題視されて久しいですが、未だにその診断数と治療数は十分ではありません。日本の睡眠呼吸障害の患者数は推定で約200万人と言われていますが、現在治療を受けている方の数はそのわずか10分の1です。まだまだ受診率が足りません。

睡眠呼吸障害は高血圧や心血管疾患等、様々な病気に関係していますが、居眠り運転による事故も時折大きな話題になります。そもそも日本で睡眠呼吸障害が注目されたのは、2003年に新幹線の運転手が居眠り運転をしていて、その運転手が睡眠呼吸障害であったことです。その方はなんと8分間にわたり居眠りをしていたそうです。その他にも、2012年に居眠り運転が原因でツアーバスが事故を起こしたことは記憶に新しいと思います。この時は死者7人と40人近い怪我人が出ました。

てんかんが運転免許証の交付や更新に影響することは皆さんご存知かと思います。てんかんを持つ方が運転免許を取得するにあたっては、一定の制限が設けられています。しかし、睡眠呼吸障害にも同様な規定があることは皆さんご存知でしょうか。平成26年の道路交通法の改訂で、睡眠呼吸障害も規制の対象になりました。運転中の眠気を自覚しているにも関わらず質問表に「ない」と記載したり、適切な検査、治療を受けていない場合は、罰則の対象となったり免許の交付/更新ができないことがあります。

睡眠呼吸障害の検査は難しいものではありません。自分の安全と社会の安全のために、「自分はもしかしたら」と思う方は気軽に当院内科へご相談ください。