独立行政法人 労働者健康安全機構 秋田労災病院

秋田労災病院通信

秋田労災病院通信 No.160 平成29年5月発行

乳がんの増加

消化器外科部長  佐藤 茂範

乳ガンは女性の癌のなかで最も多く、更に近年増加傾向です。
日本人女性が一生涯に乳ガンに罹患する確率は従来20数人に1人と言われていましたが最近では12人に1人と言われています。


さて乳ガンの発症には女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が密接な関連のあることがわかっています。


乳ガン発症のリスクと各種の環境因子との関連性については世界的に幅広く研究されております。そのなかで妊娠、出産、授乳、月経歴との関連性は確実のものとして認識されています。


まず妊娠出産の経験のない女性は経験者に比べて発症のリスクは約2.2 倍といわれています。また、出産回数は多い人ほどリスクは低下傾向で、5回以上出産した人は未産の人の半分のリスクといわれています。


授乳経験についても同様であり、更に授乳期間は長いほどリスクは低下するとされています。すなわち出産数の減少は乳ガン発症の増加につながっているひとつの原因といえましょう。


月経歴でいうと初経が早い人や、閉経が遅い人はリスクが高いといわれます。つまり生理のある期間の長い人ほどリスクが高いことになります。


肥満と発症リスクの関連性について述べます。
脂肪細胞中にはエストロゲンが含有されています。肥満になって脂肪脂肪が増えた結果エストロゲン濃度も上昇するということです。肥満について特に注意したいことは、閉経後の肥満は確実に発症リスクを高めるとされていることです。

栄養豊富は食品に囲まれた生活をしていながら、出産数が減少する現代に乳ガンが増加とは皮肉なパラドックスです。