独立行政法人 労働者健康安全機構 秋田労災病院

秋田労災病院通信

秋田労災病院通信 No.179 平成30年12月発行

慢性腎臓病について

 

内科部長 熊谷 真史

慢性腎臓病は様々な原因により腎臓の機能が低下している病態の総称で、放置すると腎不全に至る疾患です。CKD(chronic kidney disease)という呼称も最近は定着してきました。慢性腎臓病はIgA腎症や多嚢胞性腎症など比較的稀な疾患でも発症しますが、現在最も重大な原因は糖尿病、高血圧といった、いわゆる生活習慣病と呼ばれるありふれた慢性疾患です。

慢性腎臓病は重症度が上がるとそれ自体でも症状は出ますが、それ以外に注目すべき点が2点あります。1つは心筋梗塞や脳卒中といった血管疾患の発症リスクを上げてしまうことです。腎臓病の重症度が上がるほど、血管疾患のリスクは跳ね上がります。例えば心筋梗塞は、正常の人に比べて高度の腎機能低下がある人は20倍以上のリスクを背負います。もう1つは、腎機能が廃絶すると透析が必要になってしまうことです。特に糖尿病は透析に至る原因疾患として最も多く、社会的問題と言っても過言ではありません。現在透析が必要になる人の約半数は糖尿病が原因です。透析になると週数回の通院が必要になり、日常生活が極端に制限されてしまいます。

慢性腎臓病は未然に防ぐか、もしくはごく軽症の時点で発見して、しっかりと原因疾患の管理を行うことが何より重要です。初期には症状は全くありませんので、健診等で血圧高値、血糖異常、腎機能低下等を指摘された場合は、必ず受診していただきたいと思います。